DIALOGUE WITH SHOTARO MURAKAMI

 
村上生太郎は色鉛筆で果物や植物など親しみのあるモチーフを画面全体に色鮮やかに描く画家。テキスタイルや服飾から影響をうけた色彩や形、テクスチャーが生み出すハーモニーは視覚的な心地よさを鑑賞者に与えている。




DIALOGUE WITH


村上生太郎

アーティスト:SHOTARO MURAKAMI (S)
参加メンバー: Maku (M), Salina (Y), Henry (H)


M 作品のコンセプトについて教えてください。

S パッと見た時に鑑賞者の目が気持ちよくなる絵。背景に物語があるわけではなくて、単純に視覚的に心地いいものっていうのがコンセプトです。

M 色鉛筆で描き始めたのはいつ頃ですか?

S 色鉛筆のみを使い始めたのは大学院2年生くらいでした。

M それまでは色鉛筆だけではなかったということですか?

S アクリル絵具のベタ塗りとかをしていました。色々な絵柄を試したりしてアクリル絵具で水彩っぽい感じにしたり上から色鉛筆で描いたりとか。色々とやっていて最終的に色鉛筆になったという感じです。

M 色鉛筆とアクリル絵具だと全く違う雰囲気になりそうですよね。

S そうですね。当初似た感じの絵柄をアクリル絵具のベタ面で描いていた時は、近くに寄って見た時に多少ムラになったりとかアクリル特有のテクスチャーが出てたんですけど、自分の中でうまいこと作品の味わいにならなくて。アクリルのベタ塗りは手法としてはありがちって言えばありがちで。もっと自分だけのしっくりくる何かがないかなって探していたときに色鉛筆が家にあったので描いてみようということになりました。途方もなく大変な作業だからこんな馬鹿なことやっている人は他にいないだろうなという感じで最初はやっていたんですけど、意外とそれがいいかもってなりました。

Y 作業は大体どれくらいかかるんですか?

S サイズよりかは描いているもののパーツの形によって時間が変わってきます。レモンとかの場合は四角をいっぱい描くので結構時間がかかっています。





Y 確かに、よく見ると小さな四角が見えますね。

 
S そうなんです。あの単位で塗っているんです。

M 下書きは色鉛筆で?

S 以前は色鉛筆で下書きをしていたんですけど、色付きのシャープペンシルは色鉛筆より消えやすくて便利なので使っています。





H スケッチはどこでしていますか?

 
PHOTOSHOP上でトラックパッドを使って描いています。ここで配色とかも決めて描き始める感じです。





H 全ての作品はここから始まっているということですね。描いている時は楽しさと大変さ、どちらの方が強いですか?
 
S 作品を描いている時はずっとしんどいです。楽しいはあまりないですね。でも出来上がった作品を見ると、「なんかいいじゃん!」って感じになってその瞬間のためにやっていますね。(笑)
 
M 絵に登場するモチーフはどのように決めているんですか?
 
S ふとこれがいいかもっていう感じで決めています。
 
M 身の回りにあるモチーフが多いイメージがあります。
 
S そうですね。お花とか果物とか。

M 動物はあまり登場しないですよね。

S 動物はあまり描かないですね。描いてみたいんですけど、今のところあまり興味がないというか。動物より植物の方が自分的にビビッとくるという感じですね。

M 人物はどうですか?

S 人間に注目しているというよりかは洋服がメインで、捉え方としてはマネキンみたいな感じですね。

H 描くときはその物を見ながら描きますか?それとも頭の中のイメージから始めていますか?

S インスピレーションを手がかりにするんですけど、モチーフが目の前にある時とない時と両方あります。例えば季節的に描きたい花が用意できない時とかもあります。 





H たくさんの植物とかわいい花瓶に囲まれていますね。
 
S あまり外出しないんですよ。家にこもりがちなので、そうなってくるとインプットするのが少なくて。家の中に自分の好きな植物とか花瓶を置いておくと何も考えなくても目に入って吸収するものがある気がします。「こういう色味がいいかも」って。
 
H 花瓶はどこで買っているんですか?
 
S お店でも買うんですけど、メルカリとかで買ったりするときもあります。花瓶って好きな人は好きだけど、いらない人にとってはいらないものなので。実家に眠っているものとかいい感じにビンテージっぽいものとか。絵のモチーフにしたいのがあって形とか色とかバリエーションを考えて選んでいます。
 
M とても色鮮やかだから家に置いてあるものを見ているだけでも刺激がたくさんあってインスピレーションになりそうですね。他の人の展示会とかよく観に行ったりしていますか?
 
S 展示は仲の良い友達とか知り合いのとかは行きます。話題になっているのはみんな行っているし、行かなきゃと思いつつあまり行かないです。好きな作家さんとかは行きますけど。観ることは大事だと思うんですけど自分も割と引っ張られちゃう気がするので積極的には行っていないです。
 
M 作品は購入したりしますか?

S ないですね、買ってみたいんですけど。そろそろデビューしたいなって。(笑)
 
H そういえば、後ろにマリメッコのテキスタイルがありますね。

S そうですね。これは誰かの作品を買った感覚かもしれませんね。マリメッコの単物で売っている生地なんですけど。

H 私も買ったことがあります。マリメッコではないんですけどデンマーク製の生地を買って額に入れて絵みたいに飾っています。

Y そういえば、かかっている洋服もマリメッコですね。

S そうなんですよ!

H 作風もどことなくテキスタイルや洋服のパターンとかを連想させますよね。

S 元々は作家志望であったわけではなくて、テキスタイルデザイナーになりたくて大学に入ったんですよ。

M 大学はデザイン科でしたよね?

S 入ったのはデザイン科だったんですけど、テキスタイルの授業がなくて。染色をやりたいなら工芸科で、芸大の工芸科だと伝統技法を勉強するから自分のニュアンスとは違ったんですよね。シルクスクリーンとかデザインっぽいことがしたかったので、染めたりとか織ったりではないなって。デザイン科でではテキスタイルが好きで入る人もいるし先輩に教えてもらえるっていう話も聞いていました。でも入ってみたら意外と厳しくて。とある会社にインターンをしたんですけど、実際に働いてみたらなんか違って。(笑)挫折して別の会社に行ったんですけど、そこも違うなって。その時にテキスタイルでの就職は厳しいかもって思いました。個人でテキスタイルをやるにも設備とかも必要になってくるし、色々どうしようってなって。絵を描くのが好きっていう感覚で布を作っていたから、一旦絵を描こうということになって大学院に進学することにしました。デザイン科の研究室って色々あるんですけど、デザイン科の中で画家を志望する学生が行く研究室があったのでそこに進学しました。

 




H そういう経緯があったんですね。とても興味深いです。僕の知り合いのデザイナーは大学でテキスタイルを勉強していて、その感覚を違う分野のデザインに持ってきています。そういったデザインとアートを混ぜる感覚は僕は好きですね。

 
S そうですね。テキスタイルの独特な感覚ってうまく言えないんですけど、影響されていると思います。色彩の組み合わせとか配置もそうなんですけど、普通のグラフィックデザインの感覚とちょっと違うような。うまく言えないんですけどデザインとアートの中間という良いところを取り合うのが好きなのかなって。
 
M 見ていてなんとなく良い気持ちになるとか、言葉にできない感覚みたいなものってとても魅力的ですよね。
 
S 他のアーティストの作品よりはファッションとかハイブランドのコレクションとかを見るのが好きですね。

M 好きなファッションブランドから日々インスピレーションを受けているんですね。

S そうですね。ファッションブランド以外にも街を歩いていておしゃれな人とか歩いていたりしているのをちょっと目に焼き付けるみたいな。好きな色の組み合わせとか柄の感じとか。
 
Y 村上さんの作品に柄やパターンが入っているのもそういうところからインスピレーションを受けているのかもしれないですね。
 
S そうかもしれないですね。





H 学校を出た後すぐにアーティストになったんですか?

 
S そうですね。卒業した後すぐ始めていて、別の仕事もしているんですよ。美大の入試の実技試験があるんですけど、それを教える予備校で講師をしています。あとは高校の美術課の非常勤講師もしています。
 
H 何年生を教えているんですか?
 
S 1年生です。
 
H 1年生を教えるのは面白そうですね。僕自身香港から来たのであまり詳しくないんですが、日本の高校の美術の教え方ってどうですか?
 
S 先生によって色々と違うんですけど、自分はほぼ強制はしないです。課題を与えてこれをデッサンしてくださいっていう感じです。デッサンってやっぱり写実的に描くために色々知識とか技術とかあると思うんですけど、そういうことをあえて教えずに「よく見て描いて」って言うと、一人一人個性的で面白い絵が沢山あって。それが一番楽しいです。教えている子達は男子校で普通科なので美術の専門教育はうけたことがなくて。そうすると出てくる作品が作為的じゃなくて「すごく面白いな!」っていう作品が沢山出てきますね。本人はその感覚をわからずやっているけど、こっちは勝手に楽しくなっているっていう。(笑)そういうのもインスピレーションかもしれないですよね。
 
デッサンは特にそうだと思うんですけど、上手くなりすぎるのもつまらないですよね。
 
S そうなんですよ。自分も美大受験で経験があって、芸大のデザインは写実的な絵画を描くから物を見て絵を描くと癖が染み込んでしまって。写実的なタッチで描いていた時期もあったんですけど、どうしても好きじゃないなって。だからと言って崩すのもどう崩していいのか自分の中でしっくりくるまで時間はかかりましたね。





M
 自分なりの崩し方を生み出すのは難しそうですよね。
 
S どういう基準でデフォルメすればいいのかとか、わざとらしい感じになったりとかして「あざと!」って思ったりとか。(笑)線を吟味することからは自分を絶対に変えられないから、上手くデフォルメするとか写実的な感覚で線を選ぶとか上手く折り合わせてやるようにしました。そうしたらしっくりくるようになりました。
 
M デッサンは昔から得意でしたか?
 
S 最初の方は全然ダメだったんですけど大学に入る前に2年浪人して、得意になりましたね。あとは予備校の方でゴリゴリに教えていると、自分もスキルアップをしていくので今は得意ですね。





H アートと音楽は村上さんの中でどう関係していますか?
 
S 自分の作品と共通する何かがあると思っています。ピアノを引くときに楽譜を見て弾くよりコードを見て弾くんですけど、コードって何かおもしろくて。和音やリズム、音色があって更生させられているじゃないですか。絵もそういう感じなのかもしれないです。色や形、テクスチャーがあって。大きい構成要素としては3つだと思うんですけど、そこに通じるものがあるような気がしています。コードは自分の中で色に置き換えていきます。いくつかの色の組み合わせからできる調和みたいなものです。
 
H ハーモニーの中から自分にとって気持ちの良いところを探すのは面白いですね。弾きながら歌ったりしますか?(笑)
 
S そうですね。一人で勝手に歌って楽しくなっています。(笑)

M 絵を描いている時以外はピアノを弾いたりしているんですか?
 
S そうですね。ピアノを弾いている時が多いですね。あとは漫画を読んだりとかYouTubeを見たりとか。基本家の中です。(笑)
 
M 朝起きてからのルーティンとかありますか?
 
S ルーティンはあまりないです。制作期間で仕事に行かない時は昼夜逆転で、眠くなったら寝るし腹へったら食べるしみたいな。(笑)もうバラバラですね。
 
アーティストとして発信するためにどんなチャネルを使っていますか?
 
S 基本的にはインスタグラムがメインですね。展示の告知とか宣伝はとにかくインスタグラムです。私の作品を好きですって言ってくださる方はほとんどインスタグラムを見てくださっている方達ですね。
 
H これから新しい作風やスタイルを試したいですか?
 
S たまに絵具を使ったりしたいなって思う時もあります。夏に駐車場の壁に絵を描くお仕事があってその時はペンキで描きました。そういうのも楽しいなって思います。絵画として発表するときは色鉛筆ですけど、もしかしたらいずれ画材を変えたくなる時もくるかもしれないですね。素材が変わればその画材も変えていかないとって思います。絶対色鉛筆ではいけないとは思わないですね。





S 一個の感覚だけを使っていると疲れることってありますよね。なんでも描いていいとか作っていいってなるとそれはそれで難しそうですよね。
 
H 自由すぎると目的がわからなくなって難しいですよね。途中でどうすればいいのかわからなくなっちゃうとか。そういう意味でもアーティストでいるのは楽しいですけどやっぱり大変ですよね。
 
S そういう意味では色鉛筆でこういうふうに描いているのも逆に自分の中で制約を儲けているからずっと描いていられるのかもしれないです。なんでも自分の中でやっていいってなると選択肢が無限にありすぎてどうしたらいいのかわからなくなるから、できる表現も無限ではないんですね。やることが限られているからこそ続けられているっていうのはあるかもしれないです。





H それは面白いですね。なんでも良いってなると
自分の中で何が一番良いのかがわからなくなっちゃいますよね。





S アートはもっと気楽で身近な感じでいいと思っていて。海外とかだときっとそいうスタンスだと思うんですよ。インテリアの一部で絵を買ったりするのに、日本ってどうしても「芸術」に親しみのない人は一歩引いて考えるみたいな感じで。批評とかも堅苦しくて勝手に仕切りが上がっているような気がして。
 
M 単純に見ていて楽しいとか、もっと日々の生活に馴染んでいる方がいいような気がします。
 
S そうなんですよ。「これ好き!」とかそういう感じでいいと思っています。
 
M 洋服とかは単純に似合っていて好きだからという理由で買ったりしますしね。
 
S 好きな服を着るとか好きな音楽を聴くとか、私にとってアートはその1ジャンルのつもりなんだと思います。
 
M そうですね。もっと自分の「好き」っていう感覚を大事にしてアートと向き合っていきたいですね。



Fin. 


村上生太郎
 
東京を拠点に活動する画家。
色鉛筆の細かいタッチによる色面で構成した絵画作品を制作しながら
独自の感覚で色彩と形体の心地良い調和を追求する。
 
1993 東京生まれ
2018 東京藝術大学美術学部デザイン科 卒業
2020 東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻 修了

受賞歴
第68回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 メトロ文化財団賞
IAG AWARDS 2020 EXHIBITION B-gallery賞

展示歴
2019 個展 「PLAYFUL」(shatter/神宮前)
個展「still life」(ぽえむ狛江南口店)
2021 個展「Inner jouney」(3331 Arts Chiyoda/末広町)
個展「植物と人」(B-gallery/池袋)
その他グループ展多数
 


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DIALOGUE WITH はアーティストとの対話の記録です。基本ノーカットで行い、編集も最小限に実際の対話のトーンや内容を残しています。
作品やプロフィールのみでは知ることのできない、アーティストの素の姿。気さくな対話から生まれる思いがけない話をお楽しみください。